定期借地権設定契約等

定期借地権は、平成4年8月に施行された「借地借家法」により誕生しました。 当初定められた契約期間で借地関係が終了し、その後の更新はありません。 この制度により、土地の所有者は従来に比べ安心して土地を貸すことができ、借り主は、従来より少ない負担で良質な住宅を持つことができます。従来の借地権は、借地人の権利が強く、いったん土地を貸し付けると、地主がこれを取り戻すことは極めて困難でした。そのため、地主が土地を貸すことは激減してしまいました。そこで、地主が土地を貸しやすくする制度として定期借地権の制度が設けられました。

  定期借地権には、3種類あります。①一般定期借地権、②事業用借地権、③建物譲渡特約付定期借地権です。簡単にいうと(※)、①が貸付期間50年以上のもの、②が貸付期間10年から50年間のもの(ただし、事業用に限られます。居住用は一切ダメ)をカバーしています。③は、借地人が建てた建物が30年以上経過すると地主が買い取り、借地権が消滅する特殊な借地契約です(③は余り利用されていません。)。

  定期借地権を利用形態に沿って大根切りで分類すると① 10年以上の借地権(23条2項の事業用借地権)、②30年以上の借地権(23条1項の事業用借地権)、③ 50年以上の借地権(一般定期借地権)の3種類に分類されることになります。(10年、30年、50年、2項、1項、一般)

※厳密な定義ではありません。イメージとしてとらえてください。
※一般の借地権と定期借地権の一番の違い:前者(旧借地法での借地契約を含む。)は、契約更新があり、借地人から請求されると契約の更新が事実上義務付けられるのに対し、定期借地権は、契約更新制度がなく、地主が拒否すれば、再契約をしなくても済むことです。期間が来れば、地主が借地人を選べるわけですので、安心して借地契約を締結することができるわけです。
※旧借地法での借地契約:平4年8月1日の施行前に当初の借地契約を締結している場合は、旧借地法が適用されます。よって、地主は、事実上契約の更新が義務づけられるわけです。これは、何回更新を繰り返しても同様ですので、今後とも、かなりの長期間にわたって、旧借地法下での借地契約は継続していくことになると思われます(既得権)。
(下記は、国土交通省のサイトから転載)

〇 定期借地権設定契約を締結する場合、そのほとんどが、市販の書式などを参考にすると思います。
  そうであっても、個別の案件では、土地賃貸借契約公正証書に記載する内容を確認しておきましょう。

1 どの土地を、どういう目的で利用するのか
  具体的な土地の所在(土地の特定・登記情報中、所在、地番、地目、地積で表示するのが普通)と、土地をどのような用途で使用するのか(土地の使用目的)を記載します。ちなみに、使用目的が建物所有でなければ、借地借家法の適用すなわち定期借地権ではありません(借地借家法1条)。例えば、駐車場使用目的とか、資材置き場使用目的の場合は、民法上の借地権となります。これは、定期借地権とは違う種類の借地権です。
 (例:甲(賃貸人)は、所有する下記土地を乙(賃借人)に賃貸し、乙はこれを「建物所有の目的」で賃借した。
   所在:○市○町○丁目
   地番:○番○
   地目:○○
  地積:○○.○○㎡)
2 契約期間
  いつからいつまで土地を貸し借りするのかを記載します。事業用定期借地権の場合、上記図のように10年以上のもの、30年以上のものに分けられます。条項が微妙に変更しますので、注意してください。
  (例:賃貸借の期間は、平成○年○月○日から平成○年○月○日までとする。)
3 賃料と支払方法
  賃料額、支払方法を記載します。
  (例:賃料は月額○万円とし、乙は毎月末日までに、翌月分を甲指定の口座に送金して支払う。送金費用は乙の負担とする。)
4 契約の解除
  契約期間内でも、その契約を解除できる場合について記載します。
  (例:甲は、乙が以下のいずれかに該当した時は、何らの通知催告を要せず、直ちに本契約を解除することができる。
  (1)賃料の支払を○か月以上怠ったとき。
  (2)強制執行、差押え、破産の申立を受けたとき。
  (3)本契約の条項に違反したとき。)
5 契約終了時の明渡し
  契約が終了(又は解除)した時には、土地を元の状態に戻して(原状回復)明け渡す旨を記載します。
  (例:乙は、本契約が終了した時は、土地を原状に復した上で、直ちに甲に明け渡さなければならない。)
6 担保・連帯保証人
  担保や保証人、連帯保証人をつけた場合には、その内容を記載します。
  (例:連帯保証人○○は、乙が甲に対し負担する一切の債務につき連帯して保証する。)
7 強制執行
 「本公正証書に記載した金銭債務の不履行があれば、強制執行を受けても異議がない」などの強制執行認諾文言を記載することがあります。
  賃貸借契約公正証書では双方の信頼関係を考慮して、あえてこれを記載しない例もあります。公正証書では、土地について直接明渡しの強制執行はできません(強制執行できるのは金銭債務だけです。)。土地の明渡しには、判決手続などを経る必要があります。
  (例:本契約による金銭債務を履行しない場合、直ちに強制執行に服する旨を陳述した。)

こんな依頼は嫌だ!(公証役場の本音)

・宅建業者の方から公証役場に持ち込まれる定期借地権設定公正証書作成の依頼。こんな依頼は、公証役場を困惑させます。
① 作成期日にゆとりがない。
 「今週中に契約を結びたいんだけど。」「〇〇日にしか当事者が来られないんだけれども。」という依頼を受けることがあります。定期借地権設定契約は、条文数も多く検討に時間を要する問題点もあります。「できれば、3週間くらいの余裕をもって依頼してほしい。」というのが本音です。
② 丸投げ。
  公証役場に「覚書」のFAXだけを送り付けて、あとは知らん顔。という業者も少数ながらいます。覚書(正式な定期借地権設定までの間の取り決めと定期借地権設定契約の予約契約と解されます。)の中には、正式契約前だけに適用される部分と、正式契約後にも適用される部分に分けられますので公証役場との打合せが必要です。当事者情報(当事者の住所、職業、氏名、生年月日)が不明なまま依頼してくる業者も少なくありません。法人の場合は、必ず、資格証明書と印鑑証明書が必要です。ご本人が公証役場に来ることができるのか、代理人になるのかの情報が不明のまま持ち込んでくる方もおられます。早期に情報が得られますと、公証役場も早期に問題点を探り出すことができ、作成期日に間に合うように対処できるようになります。
③ 必要書類不足
 土地賃貸借契約は、賃貸対象土地の特定が必要です。土地の特定は、登記情報で行います。登記簿上の所在、地番、地目、地積の情報は、どうしても必要になります。また、地目が農地の場合、農地法上の制約があります。その制約がないことを示す資料(農業委員会の許可、届出又は現況非農地であること)が必要なこともあります。一筆の土地の一部の賃貸借である場合は、測量図面で特定することも必要です。これら問題点を探る意味でも登記情報は必須です。
 当事者情報。当事者が自然人である場合は印鑑登録証明書(+職業情報)、当事者が法人である場合は資格証明書(商業登記簿謄本or代表者事項証明書)、法人印鑑証明書が必要で、作成当日にそれらの実印を持参していただきます。
 代理人情報(本人が公証役場に来られる場合は不要です。)。代理人による定期借地権設定契約を締結する場合には、委任状が必要になります。詳しくは委任状の書式をご覧いただきますが、委任状に公正証書の案文を添付して、全てのページを割印(契印)するか袋とじにする必要があります。
④礼節を欠く。
 ときどきですが、公証役場を自身の下請けのように扱う業者の方もいます。自らのお客様に対してもそのように接するのでしょうか?特段の礼節は必要ありませんが、最低限の常識をもって依頼をお願いいたします。

A.事業用借地権は、定期借地権の一種です。設定期間が10年から50年未満の間と定められました(10年以上のものと、30年以上のものに分かれますが、期間以外の内容はほぼ同一です。)。これは、地主側が希望すれば、契約終了とともに必ず返還が約束されています。終了後でも、地主側とテナント側が新たに合意すれば、新たに事業用借地権を設定することができます。人の居住用の用途としては事業用借地権は認められていません。

  事業用借地権は、住宅等の居住用以外の用途だけに利用できる借地権(仮眠室は可能ですが、寄宿舎を設けることはできません。)で、公正証書による契約書作成が義務付けられています。事業用借地権は、ガソリンスタンド、コンビニエンスストア、外食産業など「ロードサイドショップ」などで幅広く使われています。土地所有者にとって、「建物投資や借入金返済の事業リスクを負わずに地代収入を得ることができる」というメリットを持っています。年間の地代収入の額も、土地代の3~6%程度と比較的高く、事業リスクの低い割には、収益性の高い事業と評価されています。
  事業用借地権は、30年以上のもの(1項事業用借地権)と30年未満のもの(2項事業用借地権)に分けられていますが、実際には、期間が異なるだけで、実質的な差はありません(30年以上の事業用借地権は、一般の借地権との差を明らかにするための条項を公正証書中に明示的に設ける必要があるのに対し、30年未満の事業用借地権は法定事項なので公正証書中に明示的に設けなくとも事業用借地権としては有効になります。実際には、30年未満の事業用借地権でも公正証書中に明記されいるものが大部分です。そのため、実務的に存続期間以外の差はありません。)

(注)30年の事業用借地権は、1項借地権です。(宅建業者のような専門家の方でも、事業用借地権合意書の様式が2項借地権のものを用意なされているものがあります。そのままでは公正証書の案文としては使用できないことがありますので、ご注意ください。)

〇 借地借家法第23条第1項の事業用借地権30年以上50年未満の事業用借地権:事業用借地権とするためには、契約の更新(4条)なし、建物の築造による存続期間の延長(5条)なし、買取請求(13条)なしとの定めを設ける必要があります。これは、通常の借地契約と区別するためで、事業用借地権であることを明示する必要があります。
〇 借地借家法第23条第2項の事業用借地権10年以上30年未満の事業用借地権:借地借家法3~8条、13条、18条は、当然適用がありません。一般の借地権では、30年以下のものはない(借地借家法3条)ため、30年未満の借地契約としては事業用借地権しかないことになります。実務上が確認のために上記条文の適用がないことが明示されていることが多いようです。

利用形態

 事業のために土地を賃貸借する定期借地権で、典型的な利用形態としては、交通量が多い道路に面した土地に、コンビニやファミレス、工場などを建てるために利用されています。住宅、寄宿舎を除く事業用物件で、①借地期間を短く設定できるため、短期的な土地活用ができること、②業態によっては、住居用の物件より高い地代を設定できることが大きなメリットで、「資産承継対策」として用いられることも少なくありません。

借地借家法(抄)

第22条(一般定期借地権)
  存続期間を50年以上として借地権を設定する場合においては、第9条及び第16条の規定にかかわらず、契約の更新(更新の請求及び土地の使用の継続によるものを含む。次条第1項において同じ。)及び建物の築造による存続期間の延長がなく、並びに第13条の規定による買取りの請求をしないこととする旨を定めることができる。この場合においては、その特約は、公正証書による等書面によってしなければならない。
第23条(事業用定期借地権等)
1 専ら事業の用に供する建物(居住の用に供するものを除く。次項において同じ。)の所有を目的とし、かつ、存続期間を30年以上50年未満として借地権を設定する場合においては、第9条及び第16条の規定にかかわらず、契約の更新及び建物の築造による存続期間の延長がなく、並びに第13条の規定による買取りの請求をしないこととする旨を定めることができる。
2 専ら事業の用に供する建物の所有を目的とし、かつ、存続期間を10年以上30年未満として借地権を設定する場合には、第3条から第8条まで、第13条及び第18条の規定は、適用しない。
3 前二項に規定する借地権の設定を目的とする契約は、公正証書によってしなければならない。
第24条(建物譲渡特約付借地権)
1 借地権を設定する場合(前条第2項に規定する借地権を設定する場合を除く。)においては、第9条の規定にかかわらず、借地権を消滅させるため、その設定後30年以上を経過した日に借地権の目的である土地の上の建物を借地権設定者に相当の対価で譲渡する旨を定めることができる。
2 前項の特約により借地権が消滅した場合において、その借地権者又は建物の借地人でその消滅後建物の使用を継続しているものが請求をしたときは、請求の時にその建物につきその借地権者又は建物の借地人と借地権設定者との間で期間の定めのない賃貸借(借地権者が請求をした場合において、借地権の残存期間があるときは、その残存期間を存続期間とする賃貸借)がされたものとみなす。この場合において、建物の借賃は、当事者の請求により、裁判所が定める。
3 第1項の特約がある場合において、借地権者又は建物の借地人と借地権設定者との間でその建物につき第38条第1項の規定による賃貸借契約をしたときは、前項の規定にかかわらず、その定めに従う。

 

「期間30年の事業用借地権」は、1項?それとも2項?

事業用定期借地権には、借地借家法23条の1項の借地権と2項の借地権があります。
1項の借地権は30年以上50年未満
2項の借地権は10年以上30年未満です。
1項借地権と2項借地権では、覚書や公正証書の書式や条項文言が異なってきます。
問題。「30年の事業用借地権は、1項借地権か2項借地権か?」

答え。1項借地権です。「30年以上」というのは「30年」を含みます。「30年未満」というのは「30年」を含みません。ちなみに、「29年と364日」は30年未満ですので、2項借地権になります。

 

A.借地権の存続期間を50年以上に設定して、期間が満了したら権利が消滅する借地権です。期間が50年以上と長いため、長期的に使う予定がない土地をお持ちの方に向いています。広めの土地をディベロッパーに貸し、ディベロッパーがそこに分譲マンションを建てるケースでは、主に一般定期借地権が用いられます。事業用借地権のように目的の制限がありません。居住用のマンションなどに向いています。

  存続期間が経過すると、地主が希望すれば、必ず土地が更地になって戻ってきます。そして、地主が希望すると、再び一般定期借地権を設定することにより、土地上の分譲マンションを継続して使用することもできます。地主は、契約中は、長期にわたり安定した地代収入を得ることができます。地代の変更も可能ですので、物価変動に対応することもできます。他方で、借り手であるディベロッパーは、土地を借り受ける場合の地主側の抵抗感を少なくして契約を締結しやすくするメリットがあります。
  なお、住宅地で活用すると、小規模宅地の適用により、固定資産税や都市計画税が格段に軽減され、固定資産税は更地の6分の1、都市計画税は3分の1になります。例えば、未利用地で年間100万円あった税額も、計算上5分の1以下になります。
  さらに、相続税対策としては、土地の評価額が圧縮されることで、節税面の効果が大きく、また、遺産を分割する、相続税を納税するための対策にも効果を発揮します。平成10年8月の国税庁の個別通達「一般定期借地権の目的となっている宅地の評価に関する取扱いの見直し」により、底地の評価額が大幅に引き下げられ、節税額が大幅にアップしました(従来は20%の評価減)。

  この契約は、公正証書によることが義務付けられるわけではありませんが、契約期間が長期にわたりますので、契約関係を明確にするためにも、公正証書の作成による契約が望ましいといえます(万一、契約書を紛失等した場合でも、原本は、公証役場に保管されています。通常の公正証書の保存期間は20年ですが、契約期間が長い場合、特別の事情があるとして、原則その契約期間保管されます。公証人法施行規則27条3項)。

A.借地権設定契約で測量図面を添付しなければならないのは、一筆の一部が契約の対象となる場合です。

  事業用借地権、一般定期借地権に限らず、借地権設定契約では、借地をする範囲が確定(特定)していなければなりません。範囲の確定(特定)のためには、土地の登記情報(登記簿謄本)を利用することになります。土地の登記は、一筆(「ひとふで」又は「いっぴつ」と読みます。)ごとに地番がつけられています。通常は、一筆の土地全部が借地権設定契約の対象となりますので、土地の登記情報(所在、地番、地目、地積)だけ契約対象地を特定します。つまり、借地権設定契約で、 一筆全部が対象となる場合には、測量図面を添付する必要はありません。

  しかし、
一筆の土地の一部が対象になる場合、登記情報だけでは借地の範囲が確定(特定)できません。この場合は、必ず、測量図面の添付をお願いすることになります。測量図面は、土地家屋調査士、測量士が作成した図面を添付すると安心です。測量素面が不正確なものであった場合、後々トラブルの原因になりますので、慎重に行ってください。
  測量図面を用いて土地そのものを分筆登記してしまう方法もあります。その方法は、土地家屋調査士にお尋ねください。

 

A.23条2項(10年以上30年未満)の事業用定期借地権の例をお示しします。

23条2項の事業用定期借地権

     事業用定期借地権設定契約公正証書
  賃貸人・○〇〇〇(以下「甲」という。)と賃借人・〇〇〇○(以下「乙」という。)は、別紙物件目録記載の甲所有の土地(以下「本件土地」という。)について、借地借家法(以下「法」という。)第23条第2項に定める事業用定期借地権設定に関し次のとおり契約(以下「本契約」という。)を締結する。 
第1条(目的)
  甲は、乙に対し、本件土地を乙の建物の所有を目的として賃貸し、乙はこれを借り受けた。                     
第2条(建物の用途等)
1 甲及び乙は、本件賃貸借が、専ら乙の経営するコンビニエンスストアの用に供する建物を所有するため使用するもので、乙の賃借権は、借地借家法第23条第2項に定める事業用定期借地権に当たることを承認した。
2 本件土地上に所有する建物の種類、構造、規模及び用途は、別紙物件目録記載の予定建物(以下「本件建物」という。)表示のとおりとする。
第3条(契約の更新等)
1 本契約については、契約の更新(更新の請求および土地の使用の継続によるものを含む。)及び建物の築造による存続期間の延長がなく、また乙は、建物の買取を請求することができない。                     
2 本契約については、法第23条第2項に基づき、法第3条(借地権の存続期間)、法第4条(借地権の更新後の期間)、法第5条(借地契約の更新請求等)、法第6条(借地契約の更新拒絶の要件)、法第7条(建物の再築による借地権の期間の延長)、法第8条(借地契約の更新後の建物の滅失による解約等)、法第13条(建物買取請求権)及び法第18条(借地契約の更新後の建物の再築の許可)、並びに民法619条第1項(黙示の更新)の適用はない。
第4条(賃貸借期間)
  本件土地の賃貸借期間は、2017年1月1日から2036年12月31日までの満20年間とする。
第5条(賃 料)
1 本件土地の賃料は、月額金30万円とする。 ただし、賃貸借期間が1か月に満たない場合の賃料は、日割計算とする。
2 賃料の支払は、2017年1月1日からとする。
3 乙は、第1項に定める賃料の翌月分を、毎月末日までに、甲の指定する下記銀行口座に振込んで支払う。振込に係る費用は乙の負担とする。
        記  
  振込指定金融機関 〇〇銀行〇〇支店
  預金種別  普通  口座番号  1234567
  口座名義人 ○〇〇〇
第6条(賃料の改定)
  賃料の改定は、地価及び近隣賃借料相場を考慮の上、3年ごとに甲乙協議して改定する。            
第7条(敷 金)
1 乙は、甲に対し、敷金として金180万円を本契約締結時に交付した。               
2 甲は、本件賃貸借終了後、乙の本件土地の引渡しと引換えに、前項の敷金から未払い賃料を差し引いた金額を乙に返還する。
3 本条に定める敷金には、利息は付さない。           
第8条(引渡し、登記)
1 甲は、本公正証書作成後、本件土地を更地の状態で、乙に引渡し、乙と共に直ちに事業用定期借地権設定登記を行なうものとする。登記に係る諸費用については、乙の負担とする。                      
2 本契約の満了又は第○条第1項による解除及び第○条第1項の中途解約の際には、直ちに抹消登記を行うものとし、その費用については乙の負担とする。                 
第9条(増改築)
  乙は、本件建物について完成後に増改築等現状を著しく変更する工事を必要とするときは、事前に甲に通知する。
第10条(禁止事項)
1 乙は、甲の事前の承諾を得ずに第三者に本件借地権を譲渡し、又は本件土地を転貸してはならない。                 
2 甲は、本件賃貸借により生ずる賃料その他乙に対する債権を他に譲渡し、または担保に提供してはならない。              
第11条(費用負担)
  甲は、本件土地に関する公租公課を負担し、乙は、本件建物に関する公租公課を負担する。                  
第12条(優先買取、優先賃借)
1 甲は、本件土地を売り渡そうとする場合は、まず乙に通知するものとし、乙が買取を希望し、甲乙間で売買の合意が成立したときは、乙に売り渡すものとする。この場合の売買価格は、資格ある鑑定人の鑑定評価を参考にして、甲乙協議の上決定する。                 
2 甲は、乙が買取りを希望しないために、本件土地を第三者に譲渡する場合は、本件賃借権による一切の権利義務を譲受人に引き継がせるものとする。ただし、敷金については甲が乙に返還した後、乙が譲受人に改めて支払う。                  
3 甲は、本件賃借権の期間満了後、本件土地を賃貸する場合は、乙を優先することを認め、別途甲乙協議の上、条件等を決定する。
第13条(善管注意義務)
  乙は、本件土地を善良なる管理者の注意をもって、維持管理する。                  
第14条(許認可)
  甲は、本件建物の運営に必要な許認可等(以下「本件許認可等」という。)の取得に協力する。これに要する費用については、乙が負担する。
第15条(解除)
  甲又は乙が次の各号の一つに該当したときは、相手方は催告を要しないで、ただちに本件賃貸借の全部または一部を解除することができる。   ⑴賃料の支払を3月分怠ったとき                 
 ⑵銀行が支払を停止し、他から財産の差押え、仮差押え、仮処分を受け、又は競売、破産、民事再生、会社更生の申立があったとき。ただし、当事者間で、信頼関係を喪失した場合に限る。 
 ⑶営業の全部若しくは重要な一部を譲渡し、休業又は廃業し、又は会社を解散するとき。
 ⑷第10条で定める禁止事項に違反したとき。                     
第16条(中途解約)
1 乙は、甲に対して、書面による通知を行なうことにより、本件賃貸借の有効期間内であっても、本件賃貸借の解約を申し入れることができる。
2 前項の解約申入れがなされた場合には、本件賃貸借は解約申入れがあった日から6か月を経過することによって終了する。
第17条(原状回復義務等)
  本件賃貸借が、期間満了、契約の解除、又は解約により終了したときは、乙は、自己の費用負担において直ちに本件土地上の建物等を撤去し、更地にして甲に返還する。ただし、甲の責めに帰すべき理由による解除の場合は、甲が費用を負担する。              
第18条(遅延損害金)
  甲又は乙のいずれか一方が、本件賃貸借に定める金員の支払を怠ったときは、その支払うべき日の翌日より年10パーセントの割合による遅延損害金を相手方に支払う。                  
第19条(協議事項)
  本件賃貸借に定めのない事項、又は本件賃貸借の各条項の解釈に疑義が生じた事項は、甲乙互いに信義を重んじて協議をもって決定する。
第20条(管轄裁判所)
  前項の協議にもかかわらず、本件賃貸借に関して甲乙間に紛争が生じた場合、〇○地方裁判所を管轄裁判所とする。
第21条(強制執行の認諾)
  甲及び乙は、本公正証書に定める金銭債務を履行しないときは、直ちに強制執行に服する旨陳述した。
                                                   以  上
      本旨外要件
 住所 〇〇県〇〇市〇〇〇番地
 職業 〇〇
    甲(貸主)  〇  〇  〇  〇
           昭和〇〇年〇月〇日生
 住所 〇〇県〇〇市〇〇〇番地
 職業 〇〇
    甲(貸主)  〇  〇  〇  〇
           昭和〇〇年〇月〇日生
 上記両名については、印鑑証明書の提出により人違いでないことを証明させた。
     《物件目録》
1 賃貸借対象土地の表示 
  所 在 ○市○町○ 
  地 番 ○ 
  地 目 田 
  地 積 ○平方メートル 
  甲が農地である本件土地を非農地に転用し、事業用定期借地権設定契約を締結することについては、農地法第5条の規定による農地転用届出に対する平成28年12月○日付〇〇県知事の許可証を提出させ証明させた。
2 本件建物(建築する建物) 
  構 造 木造スレートぶき平家建 
  建築面積 ○㎡ 
  延床面積 ○㎡

 

A.とりあえず、以下の点を注意してください。

  目的
  事業用借地権は、居住用建物を建てることができません。量販店、レストラン、遊技場、旅館、ホテルなどのほか、公益的な協会、学校などのための建物を含みます。しかし、賃貸マンションや社宅は、居住の用に供する建物ですから専ら事業の用に供する建物とはいえないので、事業用借地権の設定はできません。老人ホームも、近年は、短期滞在であることが明らかな場合を除き、居住の用に供する建物に該当しますので、事業用借地権には該当しません。寄宿舎も長期間居住される可能性がありますので、事業用借地権に該当しないと考えるべきです。

  存続期間
  存続期間は10年以上50年未満である必要があります。その中で、10年以上30年未満の事業用借地権(2項借地権)と、30年以上50年未満(1項借地権)に分けられます。存続期間30年の借地権は、1項借地権になりますので注意してください。また、存続期間50年以上の借地権は、一般定期借地権になります(一般定期借地権の場合、居住用建物でも大丈夫です。)。

  中途解約条項の有無
  地主の立場からいうと、契約の中に中途解約可能条項が入っていると、予定していた地代が入ってこないリスクがあり、テナント側からいうと、中途解約可能条項が入っていないと、事業撤退の選択肢が狭まり経営が圧迫されます。解約退可能条項を設けるにしても、合理的な範囲で違約金支払義務を設けることもひとつの考え方です。

  契約終了時の再契約
  定期借地権では、契約の更新が認められていません。仮に、テナント側がこのまま土地を借りたい場合には、地主側と交渉して再契約を締結する必要があります。地主が現在のテナントと優先交渉条項を記載している例も見受けられます。

  公証役場との打合せ
  定期借地権などの賃貸借契約は、公証役場での検討に時間を要することがあります。ご希望の契約日時までの期間が短いと公証役場の対応が間に合わないことがあります。ゆとりをもって公証役場に連絡をお願いします。公証役場の繁忙度合いは、その公証役場によって相当違っています。あらかじめ予定している公証役場に電話するなどしてどの程度の猶予期間があれば大丈夫なのかリサーチしておくことも有益です。
  公証役場に依頼する場合、公証役場に来て契約なさる方が、本人であるのか、代理人であるのかは必ず明示してください。代理人である場合は、必要な書類も増え、委任状作成のための作業がかかりますので、通常の場合よりも時間をいただくことが多いと思われます。詳しくは、Q7をご覧ください。

  貸主(地主)が認知症になるリスク
  定期借地権設定契約は、契約期間が長期になります。当該契約内容を変更しようとしたり、当該契約が終了し、新たに契約を締結しようとする時点で地主(一般に高齢者が多い。)が認知症に罹患していると、契約の変更や再契約ができなくなってしまいます。認知症リスクは、4人に1人が罹患するといわれています。地主にとっても借主にとっても思わぬ損失を被ることになります。事前に任意後見契約又は信託契約を締結しておくなどの対策が必要です。万一、対策を施さずに認知症になってしまいますと、法定後見しか方法がなくなります。法定後見は、財産の保全に重点が置かれますので、新たな契約の締結には高いハードルに阻まれることがあります。

A.下記本人確認書類、対象不動産の特定のための書類、賃貸借契約の内容が判明する書類が必要になります。
 【本人確認書類】
  本人が公証役場に来られる場合と、代理人が公証役場に来られる場合とで必要書類が異なります。
  ・本人が公証役場に来られる場合
  本人確認書類(自動車運転免許証orパスポート(パスポートは住所を証明する住民票も必要)or個人番号カード(マイナンバーカード)or住基カードなど顔写真付きの公的証明書+認め印。これらがない場合は、印鑑登録証明書+実印)になります。
  法人が法人である場合、法人の資格証明書(商業登記簿謄本又は代表者事項証明書)と法人の印鑑登録証明書及び法人実印が必要です。
  ・代理人が公証役場に来られる場合
  代理人の本人確認書類((自動車運転免許証orパスポートor個人番号カード(マイナンバーカード)or住基カードなど顔写真付きの公的証明書+認め印。これらがない場合は、印鑑登録証明書+実印)に加えて本人の委任状が必要になります。委任状に押捺する印鑑は、本人(法人の場合は法人代表者)の実印であり、本人(法人)の印鑑登録証明書を添付することが必要になります。委任状には、委任事項を記載しなければなりません。委任状に債務弁済公正証書の案文を添付する方法が無難です。添付の方法には、割印による場合と袋とじによる場合があります。詳しくは、委任状の作成をお読みください。
 【対象不動産の特定のための資料】
  上記のほか、土地賃貸借契約の場合は土地の登記情報、建物賃貸借契約の場合は建物の登記情報になります。1筆の土地の一部、1棟の建物の一部の場合は、図面を用いて賃貸土地又は賃貸建物部分を特定します。
 【賃貸借契約の内容が判明する書類】
  賃貸人と賃借人との間の「賃貸借契約覚書」が代表例ですが、この覚書の中には、賃貸借契約が正式締結するまでの間の約定が含まれていることがあるので、通常、その部分は公正証書に記載しない扱いになります。
 

A.その賃貸借契約の賃料額を確認します。10年未満の場合はその期間の賃料額の総計、10年以上の場合は10年間の賃料額の総計を計算します。
  その総額を2倍します(双務契約のため)。
  その金額によって、基本手数料が変わってきます。これに紙代が加わります。借地契約の場合、印紙代が200円必要です。借家契約の場合は、印紙代は不要です。
      100万円以下・・・・・5000円
      200万円以下・・・・・7000円
      500万円以下・・・1万1000円
     1000万円以下・・・1万7000円
     3000万円以下・・・2万3000円
     5000万円以下・・・2万9000円
   1億0000万円以下・・・4万3000円
   1億5000万円以下・・・5万6000円
   2億0000万円以下・・・6万9000円
(以後、5000万円ごとに1万3000円増加になる(3億円まで)。3億円を超える場合は、5000万円ごとに1万1000円増加になる(10億円まで)。10億円を超える場合は5000万円ごとに8000円増加になる。)
  上記に紙代が加わります。仮に、10枚の賃貸借契約公正証書であった場合、貸主用と借主用と公証役場保存用原本(4枚までは無料)で3通作成しますので、紙代は6500円になります(1枚250円×(10枚×3-4)=6500円)。
 【計算例】
Q5で例に挙げた事業用定期借地権の月額賃料額は30万円でした。年間360万円、10年間で3600万円になります。双務契約ですので、その2倍の7200万円が基本手数料金額の基礎となる経済的価値になります。経済的価値が5000万円を超え1億円以下ですので、基本手数料は4万3000円になります。仮に、公正証書が10枚であった場合、3通作成し、ここから原本分4枚を控除し(26枚)、これに単価250円を乗じると、6500円が紙代です。これに印紙代200円を加えると作成手数料は4万9700円になります。借地契約、借家契約は、主に月額賃料額によって公正証書手数料が変わってきます。仮に、月額賃料額が300万円である場合ですが、10年間で3憶6000万円。双務契約で7憶2000万円が基本手数料の基礎となる経済的価値です。手数料算定表によると、公正証書作成手数料は19万4000円+上記の紙代+印紙代になります。

 

A.事業用定期借地権の当初契約は、必ず公正証書であることが必要ですが、その変更契約は、必ずしも公正証書による必要はありません。例えば、賃料額の変更は、公正証書によらない変更契約であっても有効なものと解されます。ただし、賃料の増額部分の支払に関しては強制執行認諾文言の適用はありません。そのため、強制執行できるのは、当初の賃料額の範囲内に限られるものと解されます。仮に、その部分にも強制執行できるようにするためには、公正証書による変更契約及びその部分に関する強制執行認諾文言によるべきものと考えられます。
  事業用定期借地権でも、存続期間の変更ができないわけではありません。しかし、10年から30年未満までの事業用借地権は、借地借家法23条2項の範囲内での延長、すなわち存続期間の延長は30年未満(29年と364日以下)になります。これを超える延長は、借地借家法23条1項の事業用定期借地権となりますので、改めて公正証書により契約を作り直す必要があります。また、公正証書によらない変更契約は、延長期間における滞納賃料について、公正証書による強制執行はできなくなります(訴訟を経ての強制執行になります。)。
  事業用借地権の譲渡契約(借地権の譲渡が許される旨の約定があるか譲渡が許可された場合)や地主の変更の場合でも、必ずしも公正証書による変更契約締結の必要はありません。強制執行するためには、承継したことの証明文書を提出し、公証役場から承継執行文の付与をうけなければなりません。
  これに対し、事業用借地権の対象土地を拡張する場合は、新たな事業用定期借地権設定契約に該当します。事業用定期借地権とするには、必ず公正証書による必要があります。賃料額や存続期間の変更、譲渡契約等とは取扱いが異なりますので、ご注意ください。